王禄本醸造+丈径(たけみち):戦い続ける姿勢
久しぶりに王祿の丈径をいただいた。傾けた盃に思いが走る。もう20年近く前のこと。
多摩独酌会をまだ小山商店の三階にある特設会場でやっている頃のこと、王禄の会をやったことがあった。あとにも先にもその一回限り。造りに挑んでいた真面目な男を弄り過ぎたのかもしれない。当時、彼は34歳だったか。あと何造りできるだろうかと真剣に考えて、ひと造り毎を試行錯誤しながら大切に醸したいと言っていた。30造りだ、いや、40は造りたい。彼の言葉だった。
[現在のラインナップ]※2018.01.26現在
35%精米 純米大吟醸 王祿 純米大吟醸
50%精米 純米大吟醸意宇(おう)
50%精米 純米大吟醸王祿 純米吟醸限定
55%精米 純米吟醸 丈径(たけみち)直汲み / 原酒本生
55%精米 純米吟醸 丈径blue(たけみちブルー)直汲み / 本生[NEW]
55%精米 純米吟醸 溪(けい)
80%精米 純米 王祿 八〇(ハチマル)直汲み / 原酒本生
60%精米 純米 超王祿60%精米 純米 出雲麹屋
60%精米 本醸造 王祿 特別本醸造 流(りゅう)
67%精米 本醸造 王祿 本醸造
王禄サイト http://www.ouroku.com/
あれこれ飲ませていただいた。が、気づいたら本醸造が出ていた。いつからだったのだろうか、正確には知らない程度の王禄ファンである。それが拙宅の定番酒となった。酒は[67%精米 本醸造 王祿 本醸造]は小山商店価格で2,200円ぐらいだったと記憶しているが、定かではない。
普通酒が旨い蔵は技術があると考えている。本醸造にしてもそうだ。精米歩合によって酒質変化をする日本酒の世界では、その練度は高低差があり、高みは限りなく、底辺は底上げされていた方が当然のように酒の旨さはある。
が、旨いとは何か。熟々、考えさせられる。偏差値が高ければ東大に入れるという人間族のようには行かない。フルブラインドにしてしまえば、自分で造った酒だって分からなくなる。そんな微妙な世界観を持っているのである。
基本は真面目な造り手はおいしい酒を醸す。が、不真面目な生き方をしていてもおいしい酒を醸す蔵もあるのである。ここで言うおいしいとは、練度の高い酒。手を抜いて良いところと決めなければならないところの違いを知っている、感じてしまうのだろう。そういう酒もある。実に興味深い。
話は戻す。拙宅の定番酒・王禄本醸造。とあることがあり、丈径を買わせていただいた。王禄ファンの家内は本醸造が好きだと言った。容赦のない素人発言。垂涎の一本を一刀両断。が、改めて料理と合わせることを考えると、丈径よりも合わせやすい。ここが微妙だ。
造り手と話をしてみたい。研ぎ澄まされると合う料理の幅が狭くなるのか。これは某氏に訊いても判ることだ。丈径氏にまで訊くまでもない。
いまもなお、戦い続ける。去年よりも1ミリでも高みへ臨む。この姿勢を折々に飲ませていただく[意宇(おう)]に丈径氏の修錬された力を感じる。ひとつの旨い酒とは斯くありきと。
しかし、人は十人十色、酒もまた十色。この道は果てしなく続く、終わりのない道だ。
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