はんなりエール・ごめんね、黄桜
クラフトビールを模したとは言わないが、エールビールを造ってみましたという感じで登場してきた二種類の[はんなりエール]。ペールエール(上面発酵)の紫、茶色の麦芽を使ったブラウンエール(茶)がヤオコー(スーパー)で売られていたので買ってきた。
味は見事に調っている秀才肌。マイクロクラフトビールがブームになっていることも手伝って、大手蔵の黄桜蔵が造ってくれたビールだ。
エールビールには個性が出ていて欲しいと考えるか、軽やかな味わいに香りを添えておいしさを演出するか、売れる方向で醸造するのは良いかもしれない。でも、飲んだ後、そこに何かが残って欲しい。そう考えること自体がこの手合いのビールを飲んではいけないのかもしれない。
大手蔵の趣味なのか、片手間なのか、本気を出したら凄いんだぞという前哨戦なのか、捉えどころのない表現力。意味を持たない味わい。一体、何をしたいんだと思えてならない仕上がり。
もうひとつの強みとして、大手蔵の販売ルートがある。良くなくても押しつけることができる。そんなことはしない、できないということもあって味を整えたのかもしれない。恰もそれはオートクチュールとプレタポルテ。
多くの人に飲んでいただきたい。だから、味を調えました。
分からなくもない。飲酒人口が減っていく中で生き残らなければならない。天下の黄桜である。それこそ威風堂々と醸していかなければならない。
これまでの黄桜の販売ルートを考えると、マイクロクラフトとは行かない。淀みなく流すことを考えたら、300万本とか、500万本とか、単位が違う数字を造らなければならないはずだ。
ちなみに、首都圏のコカコーラの自動販売機に一列を入れるだけで、300万本が必要となると言われたのは、私がその仕事に携わった30年前の話。いまではもっと多いだろう。
「マーケティング」という考え方と手法がある。理想型を追求することも大切なのだが、そこには混迷する酒造業界に一石を投じるぐらいの理論武装が必要なのではないだろうか。大手蔵が大手広告代理店に言われるままに作るのではなく、独自のマーケティングノウハウを持って臨んでいただきたい。
まずくはない。おいしいと思えないエールビールだったというだけ。つまりは、個人の好み、十人十色、酒もまた十色だからして。
0コメント