百年企業を目指す、京都 天ぷら 圓堂
10年ぶりに訪れた「天ぷら 八坂圓堂」は相変わらずの見事な技と味を楽しませてくれた。
天ぷらとは蒸し料理である。衣に包まれて蒸されてこその味わい深さが出てくるものだ。それに合わせる酒はウォッシュ効果を期待できるものが一般的だが、米の旨味を持った、舌の上でその滑らかさを感じさせる味わいの酒を合わせたい。この店でも登場する滋賀の七本槍、京都では入手が困難なのだろう秋田の一白水成、大典白菊造酒錦米なども楽しめるに違いない。
揚げたてを楽しませるべく小皿で運ばれてくるテーマごとの天ぷら。ここでは一点しか写真で紹介できなかったが、その返しには油染みがひとつもない。
以前は店主自らが揚げる海老をいただいたのだが、磯辺に立つ姿そのもので、その踏ん張る脚が置かれたところに油染みがない。見事なまでの油切り。素材の味を楽しませて、その油の味を感じさせない技。蒸し料理ならではの味わいが楽しめる仕立てだ。
そして、今回はびわ湖のモロコが胸びれを返しに立てて運ばれてきた。胸びれを広げて、尾を使っての立ち姿。小さな川魚でありながらも溢れんばかりの元気を感じさせる。当然、返しには油の染みひとつない。
相変わらず見事な技は店主が揚げているものだろうと思って訊けば、当時の店主は社長業に専念しながら、その技と味の継承に努めているそうだ。
百年企業という言葉があるが、京都では百年企業が軒を並べる。飽きられないために変化を付けていかなければならないことも確かだが、守られるべきものは守り通さなければならないこともまた確かなこと。僅か10年のことだが、店舗を近隣に二つ、近隣のホテルにひとつと増やしても、その技、味は「圓堂」のまま。今回もまた感服せし。
京都祇園 天ぷら 八坂圓堂
京都府京都市東山区八坂通東大路西入ル小松町566
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